よくわかるフロンティアの必要性
前歯が前方に移動しただけで、上あごの骨も発達しています(写真⑭14、5)。
ここからのお母さんの役割は、前歯でかぶりつく食材を選択することです。
正しい自分の機能を使って、機械にたよらずに自分で治すことがいちばん大切なのです。
このことをバイオセラピー(生物学的療法)といいます。
前歯を使っていなければ上あごの骨が成長しません。
あごが成長できなければ「良い顔」にもなりませんし、永久歯の生えるスペースもできません。
噛みあわせが治ったのですから、前歯をたくさん使ってください。
※初診時六歳九カ月の女子。
治療期間一年一カ月。
バイオセラピーの結果、乳歯の前歯にすきまができました(写真⑭-6)。
前歯を正しく使っていれば、下あごの前歯の先端がすり減ってきます。
いつまでもギザギザがあるのは、前歯を使っていない証拠です。
上あごが自分の機能によって自然の摂理にもとづいて発育したのです。
歯医者さんにたよってはいけません。
自分で治すことがいちばんいいのです。
これにより永久歯の生えるスペースができました(写真⑭‐7)。
治療を開始してから一年間は、装置の力で歯を動かしましたが、その後の三年間は、四本の永久歯が生えるスペースができるように、自分の力であごを発達させました。
結果的には一つの装置とお母さんの食事の工夫により、正しい上あごとより良い顔に育成することができました。
幼児期のいつから治療を開始するかについてはいろいろと問題があります。
お兄さんやお姉さんが床矯正をしていれば幼児であっても治療はできます。
両親が歯並びでイヤな思いをしている、この症例のような場合でも治療はできます。
聞き分けのでてくる四歳になれば基本的に治療は開始できます。
顔の骨は六歳までに八〇%も発育するのですから、歯並びだけではなく「より良い顔」を作るためにも、四歳から治療を始めたいものだと思います。
症例⑮反対咬合を放置していてひどい叢生(乱ぐい歯)になったケースです乳幼児期か小学校低学年までに治療を終了すれば、ほとんどのケースが一つの装置で治療を終了することができるのに。
悔やまれるケースです。
でも遅くはありません。
女の子の成長が終了する以前の治療開始です。
このお子さんの場合、上あごの骨に正しく噛む力が加わらないので、上あごが萎縮したままです。
その結果、歯が生えるスペースがなくなり、乱ぐい歯にもなりました。
犬歯が生えてきました(写真⑮‐1)。
前歯を前方に移動します(写真⑮l2)。
犬歯があるので二番目の前歯を前に押すことはできません(写真⑮13)。
奥歯を後方移動して(写真⑮‐4)、さらにゴムで残りの奥歯を後方に移動しました(写真⑮‐5)。
犬歯の生えるスペースをつくらなくてなりません。
前から見るともう少しなのがわかります(写真⑮‐6)。
犬歯の入るスペースができたので、再び前歯を後ろから押します(写真⑮‐7)。
さあ、ここからは、前歯で噛んで上あごの骨を自分の力で育成することが大切です。
そう、顔を作ることです。
この患者さんは一二歳です。
前にも述べたように、女子の場合、一二歳と一五歳とでは明らかに違います。
一五歳から治せるのは歯並びだけですが、一二歳以下ならば顔を構成している骨の育成ができるのです。
※初診時一〇歳二カ月の女子。
治療期間三年二カ月。
反対咬合は単純に歯並びだけの問題ではなく、一生の顔の問題です。
できるだけ早めの治療開始が望まれます。
全部永久歯になってから治療を始めるのでは、顔の発育の面からは遅すぎるケースもでてきます。
この症例の患者さんも何とか写真⑮‐8まで調整して治療を終了しました。
犬歯の生える前に来院してくれていれば、ご本人も歯科医もこんな苦労はしなくてすみました。
お母さん、早めにチェックしてください。
顔の骨の成長は、男の子と女の子とでは違うことだけは、つねに気にしてください。
歯医者さんもお母さんも歯や歯並びだけ気にしています。
歯は噛むためにあるのです。
歯を使うことで噛む刺激が発生します。
正しく噛むことが大切なのです。
正しく噛む刺激はとても大切な発育刺激になることを忘れてはいけません。
生まれてから六歳までは幼児期から子どもの時期への成長期です。
六歳から一〇歳までは子どもの成熟期、一〇歳からは大人になるための成長期です。
形態だけの治療のみならず、この成長に必要な成長刺激を考慮した治療への考えが大切です。
歯列不正は子どもの成長から考えると初期矯正、予防矯正を早期に開始することが大切です。
反対咬合は上顎骨、顔面頭蓋の発育不足ですから、はやく歯列を整えて、萎縮した上顎骨、顔面頭蓋に発育刺激を与えることが本来の治療目的です。
診察室から③「三日月様」のような顔(受け口)が、どんどんキレイになっていきました七歳の女の子と一緒に、受け口のお母さんが来院されたことがありました。
なんとなく暗い感じでした。
お嬢さんも受け口でした。
私のところにくる前に、矯正専門医に相談に行かれたそうなのですが、「将来は、お嬢さんは下あごの骨の一部を外科的に切除しなくてはならないでしょう」と説明を受けたというのです。
受け口は、上あごの骨に噛む刺激が加わらないので、横顔が平坦になり、下あごが飛び出した「三日月様」のような顔になってしまいます。
お母さん自身は、子どもの頃から、その顔に劣等感をもっておられました。
矯正の先生は、「受け口は遺伝的なもので、お母さんの悪い遺伝子がお嬢さんに遺伝した」と説明したものですから、お母さんは自分のせいで、自分と同じ悩みを娘に一生させてしまう、娘に申し訳ないといつも悩まれていたようです。
私は、遺伝的要素ではなくて、後天的要素により、お嬢さんは受け口になったと診断しました。
それからは、前歯が正しく噛みあうように治療し、半年後に機械的治療は終了しました。
それからは、今まで噛めなかった上あごに、前歯をしっかり使って刺激を加えて、良い顔を目指して育成していきました。
もちろん、唇・鼻筋などが整ってきて、お嬢さんの顔がどんどんキレイに、つまり、美人になっていきました。
通院に来られるたびに、わが子がキレイな顔になってくるものですから、お母さんは大変喜ばれ、顔がだんだん明るさを増すようになりました。
お母さんの笑顔が見られて、医者として最高に幸せな思いをしました。
受け口が治って、私よりも主人が喜びましたお子さんの受け口の治療が終了したとき、お母さんから「先生、私も治りますか」と相談されました。
「うちの子どもができるのだから、私にもできる」というお母さんがけっこういらっしゃいます。
お母さん自身が歯並びを気にしているケースも多いと思います。
基本的には子どもも成人も同じですが、違うのは、成人の場合は骨ができるのに時間がかかるということです。
お母さんは、娘時代から受け口を気にしていたそうです。
検査してみると、治療が可能なので、お母さんの受け口も治療を開始しました。
お子さんと違って、不正の状態はより複雑になっていますから、治療期間と装置の数はかかりましたが、やがて治療は終了しました。
治療結果の心情をお母さんにお聞きすると、「実は、私より、主人が喜んでいます」とおっしゃいました。
交叉咬合―上下の歯並びが一カ所で変わっている噛みあわせをいいます前歯部の反対咬合を前歯の交叉咬合、奥歯でのものを臼歯交叉咬合と分類している学者もいます。
特に、臼歯交叉咬合には、下あごが左右のどちらかにかたよっている交叉咬合と、上あごが頬側か舌側のどちらかにかたよっているものがあります。
正常な噛みあわせならば、奥歯で噛むと上の前歯と下の前歯の中心線(正中線)が一致して噛みあいます。
臼歯交叉咬合が片側におこると、あごがずれているのですから、上あごの前歯と下あごの前歯の中心線が一致しません。
両側に臼歯交叉咬合がおこれば、上あごの奥歯が下あごの内側に入っているわけですから、左右のあごのずれは生じませんが、奥歯の噛みあわせが逆になるので、噛む機能が著しく低下します。
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