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満足状態にある顧客層をメタファーを使って表現してみると、順次、伝導師客、有閑マダム客、傍観者客、人質客、テロリスト客、となる事業にとってもっとも厄介な存在はテロリスト客である。
この層は、過去にその事業からきわめて腹立たしい対応を受けたか、何らかの影響で劣悪なイメージをもっている層である。
この層は、当然その事業と取引しないばかりか、他の潜在的購買者に対しても悪口をいいふらし、購買をやめさせようとする。
まさにほかの潜在・顕在購買者を暗殺する存在なのである。
人質客は、不満ながらやむを得ず取引や購買をしている層である。
これは、たとえば電気、ガス、水道などの独占型公共サービス会社などの客にしばしば存在する。
たとえ対応サービスが悪くても、そこと緑を切ったら生活ができないので仕方なく継続している状態である。
一般の民間事業の場合でも、退出障壁が高い場合には不満でも人質客としてとどまることがある。
たとえば、解約手続きが面倒な生命保険や銀行の自動引落しサービスなどはその例である。
傍観者客は、満足はしていないが、さりとて不満でもない客である。
このゼロの満足状態をアンサティスファクション(unsatisfaction)といい、先のマイナスの満足の状態をディスサティスファクション(dissatisfaction)という。
前者は、満足していないが怒ってもいないので成り行きで購買している層、後者は、怒っているために基本的に購買を拒否するか抗議行動に出る層である。
傍観者客は、その都度、状況に応じて異なる相手から購買する層であるから、事業サイドからみると大きな機会損失の対象ともなり得る層である。
有閑マダム客は、まあ満足しているが、いつ浮気をするかわからない顧客層である。
現在の取引・購入先に満足していると表明しながら、明日になると別の購入先に移ってしまう可能性がある。
今日、このタイプの顧客はかなり多いと予想される。
伝導師客は、その事業へのロイヤリティがきわめて高い層である。
この層は、米国ゼロックス社の顧客満足度調査から、有閑マダム層に比べて六倍の再購買をしていることがわかっている。
浮気をせず、ひたすら特定事業からの購買を継続するが、さらに重要なことは、この言葉が示すように、他の潜在・顕在購買者に積極的にその事業の素晴らしさを伝導してくれることである。
この層こそ、「客が客を呼ぶ」形で周辺顧客の創造に大く貢献してくれる功労者なのである。
顧客満足状態に応じた五つの顧客プロフィールに対し、マーケティングはどのように対応すべきか。
対応の基本は、満足状態のスケールの左から右へ顧客を移動させることである。
そして、事業の伝導師客をできるだけ多く創り出すことである。
このことは企業にとって、大きくみて三つの顧客対応策として捉えられる(図表^Jくくor>)C第1は、マイナスの満足状態にある顧客(テロリスト客や人質客)への対応。
この層がいるということは、顧客の不満や怒りをつくっているということだから、事業の基本命題である永続性そのものが脅かされていることにはかならない。
換言すれば、そのような状態は、顧客満足をもって存在を認められるという企業の社会的存在理由をすでに失っていることを意味する。
したがって、この層への対応の基本的、最低限の課題は、社会的存在理由そのものを回復することである。
それゆえ、この対応は、社会的責任を含む社会的満足の追求として行なわれなければならない。
第二の対応は、ゼロ満足状態の顧客(傍観者客)に対するもの。
この層は、満足もなく不満もない成り行き顧客であるため、事業目的である顧客の創造と維持のためには魅力的な、将来顧客となり得る層である。
したがって、この層に対しては積極的に満足を仕掛け、顧客の創造と事業成長をはかるべきである。
その方法は、戦略的顧客満足の追求である。
第三の対応は、すでに満足している顧客(有閑マダム客と伝導師客)へのものである。
すでにプラスの満足状態にあるといえども、競合他社が新しい満足水準やサービスを提供すれば浮気もしかねないために、常にロイヤルな固定化につなげる努力が必要になる。
この具体的な方法は、今日、関係性マーケティングが主要テーマにしている関係的顧客満足の追求である。
以上のような三つの基本的なマーケティング対応に対し、本章では、まず以下で社会的満足と戦略的顧客満足を中心に論じ、関係的顧客満足については次章で関係性構築の戦略として議論することにしよう。
既述のように、社会的満足の追求とは、少なくとも怒りや不満をともなう顧客のマイナス満足状態をつくらず、社会に生かされる事業づくりの努力を指す。
もともとマイナス満足をつくること自体が事業としての社会における存在意義を失っていることだから、これは事業の社会的責任と捉えてもよい。
事業として社会的満足を追求し、社会的責任を全うするためには、図表414に示されるように、同心円の中核にある基本責任をまず果たし、次に義務責任を、さらに支援責任を果たすという形で遂行される。
特に、社会的責任の問題はややもすると義務責任のみと考えられやすいが、基本責任を明確にしなければ義務責任の意味が唆味になり、また支援責任を取り入れなければ今日の社会的存在意義や事業の永続性の根拠を欠くことになる。
その意味で、この三つの責任はともに重要な社会的満足追求のテーマとなる。
基本責任社会における事業の存在理由は、事業が社会にないよりもあったほうがベターなことである。
この、社会における事業の存在理由は、「社会のメンバーと相互同意に基づく交換を促進すること」とされる。
交換が当事者双方の同意のもとで行なわれたということは、とりもなおさず、双方の知覚価値が上がったことを意味する。
なぜなら、売り手はもらった代金の価値のほうが渡した商品・サービスの価値より大きいと知覚したから交換をしたのであり、買い手も支払った対価の価値より受け取った商品・サービスの価値のほうが大きいと知覚したから交換に応じたわけである。
いま、この当事者のみによって一つの社会が構成されていると仮定すれば、双方の知覚価値の上昇は、社会全体の価値(つまり社会的満足)の上昇を意味する。
このように考えると、社会における事業のもっとも基本的な責任とは、相手(顧客)が納得し満足する形で、その支払い価格以上の相手にとっての知覚価値物(商品・サービス)を提供すること、つまり相手の自由意志に基づく交換を積極的に促進することである。
考えてみれば、われわれが日々の暮らしのなかで自分の好みに合ったかなり高い水準の衣・食・住・レジャー生活を享受できるのは、まさに事業による交換の賜物といえる。
自分の好きな靴を履き、好みの服を着て、好物を食べることができるのは、まさに交換の結果である。
このように、事業は社会のメンバーに対し、交換を通じてその生活水準を向上させていると考えられる。
この社会的満足への貢献こそ、まさに事業の社会における根本的な存在理由、つまり社会に対する基本責任といえる。
事業が社会に対して責任を果たすということは、前記のように、何よりもまず当事者が納得し満足する交換を促進することだが、その際、事業はしばしば社会全体に対して二つのタイプの不利益を与える。
いま、この不利益を社会的不経済とみると、7つは外部不経済、もう1つは内部不経済である。

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